炭焼き 1999年3月13日から3月30日

1999年 川上 森の勉強会主催  「炭焼き」


平成11年3月13日から30日まで川上村に於いて森の勉強会主催で炭焼きが行われました。
3釜焼いた結果、炭俵に換算して20俵以上。10kg入りの箱で70箱以上の炭を焼くことができました。
                          
 

       

炭焼き日記

平成11年3月13日~3月30日

森の勉強会
長野県南佐久南部森林組合
指導・親方 田村 孝幸(川上村・秋山/南佐久南部森林組合)
川上村秋山 中島 初女

3月13日 晴れ 前日雪で寒い

8:30 
炭焼きガマ前集合
3年前に田村さんがこしらえた炭ガマ釜は、その時2回炭焼きをしたきりで後は使用されないで森林組合の土場(川上村・原)にあります。
中の灰を掻き出して冷え切った内部を暖めるために火を燃やす。

10:00
居倉バイパスの森林組合の伐材現場で4トン・トラックに相当量の材を貰って土場へへつけてくる。
その材をどんどん燃やしてカマの中を暖める。

13:30
関さんの高天原の山へカマの中に塗る粘土をもらいに行く。
黒土は燃えてしまうので粘土質の強い土が適していると云うことです。 軽トラック3台分の土を用意する。

夕方~夜中
田村さんが時折木をくべて一晩中カマの中の火を燃やし続ける。

前日の雪が辺り一面に残っていてカマの中は凍てついています炭焼きを1回する程の木材を燃やしました。
凄い火力で近づいた人は炎が吹き出して睫毛が燃えてなくなってしまいました。
「目は貼り付く」と云うのだそうです。
睫毛が上下絡まって瞬きがうまく出来なることです
山の斜面の土を掘ってトラックに積み込むのは大変な作業でした。

3月14日 晴れ 暖かい

9:00
朝のうちに田村さんがカマの中に溜まった灰を掻き出して綺麗に掃除して貰ってある。
(その灰は炭をカマから出して火を消すのに使う土として利用すると云うことです)
カマの中へはいると中はホカホカと暖まっている。

9:30
カマの中に漆喰のように張り付ける粘土を、昨日採ってきた土を水で捏ねて作る。
板の上に土を置いて水を掛け、足で踏みつけ、スコップで裏返ししながらよく捏ねる。

10:00
カマの中の古い粘土がボロボロになっているのをみんな落とす。

カマの中、側面に練った土をたたきつけてくっけて、それを左官の人が使うコテ状のものを木を斜めに切って作り、それでトントンと根気強く叩いて塗りつけていく。

粘土を叩くコツは土を下から上へ持ち上げ気味に、ピッタリ壁に貼り付けるように叩くとのこと。
天井部分は叩いたりはしないで、石の絡んだ部分や隙間には下から粘土を叩きつけて補強をするとのことです。

みんな泥んこになってせっ せと踏み、捏ねました
つけるとよくくっつきます。
粘土は相当量必要です。
ただひたすらトントンと叩きます
 「これが大仕事だな」
「ただ使えればいい」というのではなく、美しくなくてはいけないとか。
 カマは1つの芸術作品でもあるのです


13:30
まだまだカマの壁作りを続行中。
カマの内部の壁は、後で炭を焼く作業をする時仕事がやりやすいように、突出した所がないよう、なるだけ平らな壁面にしてやるつもりでたたいていくとのこと。

15:00
壁作りが終了し、塗った壁を乾燥させるために、また中で火を燃やす。
本当は急に乾かすのはひびが入ったりするのでよくないとのことですが、今回は急いでいるので火を燃して乾かす。

15:40
カマの入り口あたりにも粘土をたたきつけて棒でトントンたたき、きれいに塗る。
空気が入らないように、ですか?本当はもっと幅広く塗るところを、今回は2~3カマしか焼かないのでこの位でよいとのこと。

16:00
明日の天気予報は雨なので、カマの上にビニールシートをかぶせて覆ってやる。
田村さんは一晩中カマの中で火を燃して塗った壁を乾かしてしまうとのこと。


3月15日 曇
7:30
木入れ作業
昨日塗った壁はカチンコチンに乾いて固くなっている。まだ、内部は暖かい。
田村さんはその中へナラの木を入れ始める。
一番奥から木を立てていく。木は太い方を上部へ、細い方を下にして立てる。
焼けて炭になった時、量が減ると木がカマの奥側へ倒れるので太い方を上にするとのこと。
ギッシリと隙間の無いように立てていく。天井の低い場所は短い木を、高い場所は長い木を、高い場所は長い木をうまく組み合わせて立てていく。
1回目の炭焼きは内部がうまく暖まらなくて灰になる木が多いから、口元の灰になりやすい場所には白樺、クリなどの雑本を立てるとのこと。
カマの口元から火をつけた時、炎が天井に上って、中の木の上部から火がつくようになるので、口元の木に火がついて燃えてしまわないように、口元には太い木を選んで立ててやる。 
(「背中あぶり」という)

入り口へ木を置く時も太い方を 先に入れて、そのまま立てていきます
最初の木入れは中に入って作業ができるので楽です。
口元にまで木がいっぱいに入りました。入り口にゴロが見えます。
人間の智恵、そしてそれを操る腕に脱帽です!

ゴロ
これをカマの口元に置き、中に入れる木の先端をのせて、グッと押すとコロコロ木を乗せて転がって中まで木が楽に入っていきます。熱いカマの中へ木を立てる時は大活躍をするスグレモノです。

10:00                      ・・
2つの石をカマの入り口の上から3分の1位のところにカマせて落ちないようにつり、その上に石を組ませて粘土で間をつめて蓋をしてしまう。
(炭が焼き上がった時に、出す作業をする時、熱い炎が直接顔に当たらないように上部を蓋いでしまうとのこと)

つり(おがみ石ともいいます)

10:10
少し雨が落ちてくる。
カマの入り口に燃えている木を置いてそこへ乾いた木を乗せてドンドン火を燃しつける。
太い木も足して火を燃やす。夕方まで燃し続ける。
すぐクドから白い煙が出はじめる。

16:20
カマの入り口の灰をとり除き、燃えさしの木や新しい木を足してぎっしり隙間の無いように木をカマの中へ立てかける。
それから「子ガマ」を作り、その上に大きい石を組んで粘土で隙間を蓋ぎながら入り口をぴったり閉じてしまう。

夕方から大雨、夜中に止む。

「子ガマ」
空気調節用の穴で、中の炭の状態を見ながら大きくしたり小さくしたり蓋いだりします

白い煙がモクモクと出ています。蒸気機関車のよう!
森林組合の仕事が忙しい田村さんの手が空くのを待ってはじめた炭焼きです。
「子ガマ」の上へ大きい石や小さい石を積んでいきます。
積む石は中へ落ちないように外側へかけるように積むとのことです。
子ガマの口も粘土で小さくして、黒い灰を新しく作った入り口に塗ってやってカマ全体の色合いを良くします。
 「格好モンだ。女衆が顔に塗るようにしてやるだ !」
 そこまで気を使います!
クドから出る白い煙の匂いは甘酸っぱい感じ。
クドの穴の大きさは石で調節しますが、「子ガマ」の穴が小さい時はクドの穴も小さくします。

3月16日 晴
朝様子を見に行ったら火がついていなかったとのこと。
「つり」より下の部分を壊してもう1度入り口で火を燃やして火をつけ直し、夕方ようやく中の木に火がついたとのこと。1日半、火がつかなかった。
もう1度蓋ぐ作業をする。
夜中も火がついているか、田村さんは様子を見に行かれたとのこと。


3月17日 晴
13:20
クドよりうす白い煙が吹き出していて、匂いは「カラいケブリ」、白い煙が長くたなびく様子を「ケブリがノビている」という。

クドからは煙が強く吹き出しています。熱い!ケブリの様子で中のことが全部分かるとか。
カマの中の温度が上昇しているので塗った粘土が乾いてきているのがわかります。
子ガマの口は少し開いているだけです。

3月18日 晴
13:30
次のカマへ入れる木の準備をする。
明日第1回目の炭を出した後、すぐ、次回の木を入れるので、手順よく作業ができるように木を
カマの入り口右側に立て並べておく。
・すごく太い木は2つに割って、細い木は直径30cm位の大きさの束にして上下を縄でしばっておく。 
・カマの内部の高さを考えて、少し長いもの、少し短いものと加減して用意する。
・木の立て方は下を細い方、上を太い方にしておく。
・カマへ入れる時、手前側から木を使っていくので、手前に木が倒れないよう、危なくないように右奥へ木をもたれさせるように立てかけていく。
 
→右側へ重心をかけて

チェンソーで長さを揃えたり、クサビを作って太い木を割ったり大変な作業です。

カマの中の様子
カマの中の木は上から下へと火がついて蒸し焼きされてきていて、温度が上から順に下へと高くなっていくので、どこまで焼けてきているかを見るために、カマの入り口に唾を手に取ってパッとかけると、チュンと音がして1瞬に乾き、その乾き方でどこまで火がついているかわかるということでした。

3月19日 朝曇 昼頃から雨
4:00
田村さん、杉山さんが朝早くカマの入り口に穴を開けにいく。

→先ず、3ヶ所小さい穴を開ける
クドの口も石をずらして大きくする。

6:00
先の穴の下方にもう3ヶ所穴を開ける。
穴を開けると煙の色が青くなりモクモクと出はじめたとのこと。

→ツル(アケビのツル)

→カギ(まゆみの木で作ってある)

炭出しを待つカマです。入り口に穴がポツポツと開き、青い煙が立ち上がっています。
手前に「カギ」が下がっています。
カマの入り口右手には、2回目に入れるナラの木が並んでいます。

9:00
カマの入り口の石を徐々に落として空気を入れていく。
穴が大きくなる度に 中の炭の色が黒から赤に変わっていき、 あっという間に真っ赤になって炎が出はじめる。

小さな穴から中を覗くとまだ黒い炭です
穴が少し大きくなり、炭に赤みがさしてきました。 
もう少し!赤く燃えてきて、炎も少し見えてきました。
ついに蓋が全部取れました。
真っ赤に燃える炭。炎は赤を通り越して金色にヌラヌラと
揺らめいて美しい!
温度はいったい何度か?

9:30
中の炭をかき出す。
「かぎ」に「いぶり」「かつけし」を引っかけて使い、テコの要領で、道具の重さを軽くし、燃える熱い炭からなるだけ遠ざかって作業できるように工夫してある。
鉄製の「いぶり」はあまりの高温に溶鉱炉に入ったようにグニャリと曲がってしまう。

ツルを動かして前に出て「いぶり」で中の炭をそっと入り口まで出す。急がないで少し出しては、炎が治まるのを待ったまた作業する。

「いぶり」で中の炭を口元まで出します。クドの入り口あたりがいちばん難しいとか。
「かぎ」と「ツル」を自分の手足のように自在に使って作業します。
体験してみても難しくて思ったように動かないものです!
「引き出し」に持ち替えて入り口の炭を外へかき出します「熱い!熱い!」
左手の腕を曲げて顔を覆って作業することもありました。
「引き寄せ」でカマ入り口左側の炭を消すところまで寄せます。
この時、大きくて良い炭は下の方へ、クズ炭っぽいものを上の方へかぶせるように、くるみ込むようにまとめて寄せます。
用意してあった炭を消すための土を、スコップで素早くかけて火を消します。
かけ過ぎないこと。
黒土は燃えてしまうので良くないとのこと。
この土は何度でも使用し、使えば使うほど白っぽくなるそうです。

11:00
出している途中から雨が降ってきて4回目を出す頃には相当な強い雨になる。
炭から蒸気が上がりカマのあたりは白く霞んでしまいました。
出した炭が濡れると良い炭にならないので取り敢えずシートを被せて雨を避ける。

12:00
4回に分けて中から炭を出し終わる。
入り口の「つり」から上の部分も取り除いて、次の木を入れる用意をする。
カマの内側はまだ凄い高温で木クズが落ちてもすぐ発火して燃え上がる状態。
すぐ木を入れ始める。ゴロをカマの中の入り口のところに置いて、そこへ入れる木の端を乗せてゴロと一緒に木をカマの奥まで転がし込んでやる。「たてまた」を木のもう一方の端にかけてグィッと持ち上げて木を立てる。押したり叩いたりして隙間のないようにきっちり詰めて立てていく。

2回目の木入れを待つカマです。
 まだ凄い高温。
木を持ち上げる瞬間は、相当の力がいります。
あとはコツがあり、太くて重い木も手品のように!持ち上げて立てていきます。
束にした木も同じように立てていきます。 蒸気で中がよく見えません。

13:30
木入れが終了。
2回目はカマが高温で状態がよいので、口元までいい木を入れる。「つり」を掛けて入り口の上部をふさぎ下から火をつける。

14:00
雨が強くなったので出した炭の上に板を乗せ、シートを掛ける。
土を掛けて消した炭が中でまだおこっている時はツルハシや棒でそっと突っついて上から土を下へ落としてやる。
そして、その上からまた土をかける。

17:00
「子ガマ」を作ってカマの蓋をする。
雨も上がり大仕事が終わってほっと一息。



  

 何と、いい笑顔ですえ!
 田村さん、ありがとうございました。
 この素晴らしい技を継承出来ればいいのですが・・・。



お世話になりました南佐久南部森林組合のみなさま、他関係者各位の皆様に感謝します。
「炭出しをする」との村内放送を聴いて見学に来て下さった皆様もありがとうございました。
平成11年3月20日炭を掘り出して段ボールに詰め1回目の炭焼きを終了しました。

   昔ながらの炭俵の詰め方も教えてもらいました。


                                 森の勉強会(写真・文責 中島 初女)